高知と言えば“鰹のタタキ!”そのルーツと“本場”ならではの食べ方
高知県の名物料理として、もはや知らない人はいないほどの高い知名度を誇る鰹のたたき。新鮮な鰹のウロコを削ぎ落とし、五枚におろした節の表面だけをサッと炙って切り分けられ、たっぷりの薬味を振りかけて味わいます。外側の皮目は香ばしく、内側の身は半生…高知県へ訪れるのであれば、一度は必ず食べてほしい料理のひとつです。
近所のスーパーへ足を運べば、比較的安価で簡単に手に入る鰹のタタキですが、“本場”である高知県で味わえば、その独特の食べ方と抜群の妙味に驚きと感動を覚えることは間違いないでしょう。
そんな高知県の名物、鰹のタタキはどのようにして誕生し、本場ならではの特徴とはどんなものなのか。ご紹介していきましょう。
「鰹のタタキ」の「タタキ」とは
ところでこの「鰹のタタキ」という名前の料理。勘のいい人ならピンときているかもしれませんが、アジのタタキやイワシのタタキのように、「叩いて細かく切り刻まれていない」のに何故かタタキという名前がつけられていることが分かります。実は皆さんがよく知っている鰹のタタキは、本来「鰹のワラ焼き」と呼ばれる料理です。鰹の皮目を炙る際、香ばしさを加えるために燃料として藁が使われるためですが、ではどうしてこの料理が「たたき」と呼ばれるようになったのか。これは、まだ調味料が高価だった時代から、少量の塩をよくなじませるため、実際に手や包丁の腹で身を叩いているだといわれていますが、確かな由来は定かではないそうです。
鰹のタタキ発祥の諸説
鰹のタタキの発祥については諸説あり、こちらもはっきりとしたルーツは定かではありません。最も一般的な説として挙げられているのは、漁師のまかない料理として誕生したというもの。傷みやすい魚である鰹の鮮度を保ったまま食べるために、釣り上げてすぐに捌いて身を叩き、塩をなじませて食べていたという説や、鰹節を作るときにあまった身を串に刺して炙ったとする説などがあります。
その他にも、今から400年以上前に土佐を治めていた藩主・山内一豊が食中毒を防止するため、魚を生のまま食べることを禁じたのをきっかけに、当時の漁師たちが藁で炙って食べたという説や、明治時代に高知県へやって来た西洋人が鯨肉をレアのステーキにして食べる姿に倣ったなど様々です。
表面だけ炙るのはどうして?
表面を火で炙り、中はレアのままというスタイルで知られる鰹のタタキですが、ではなぜ表面だけを炙るのでしょうか。これは鰹特有の生臭さを消して香ばしさを高め、硬い皮を柔らかくして食べやすくするという目的から。さらに、炙る燃料として燃焼性の高い藁を使うことによって、火力を上げ一気に短時間で炙ることができ、香りもいっそう増します。こうした工夫をこらして仕上げることで、身の余分な水分が抜け、食感が向上し味も濃厚になるのです。
高知県ならではの食べ方
皆さんがよく知っている鰹のたたきの食べ方といえば、ネギやミョウガ、すりおろした生姜やニンニクなどの薬味を散りばめてポン酢をかけるといったものだと思いますが、本場である高知県での食べ方はひと味違います。
まずは調味料。高知県では、ポン酢ではなく粗塩をかけて食べるのが一般的です。通称「塩タタキ」とも呼ばれるこの食べ方は、前述したような漁師のまかない料理がルーツです。薬味はお店や家庭によって様々ですが、最もポピュラーなのはスライスした生ニンニク。一見すると味気のない食べ方のようにも思いますが、高知県の新鮮な鰹がもつ本来の旨みと脂が引き立つため、過剰な味付けは不要なのです。この食べ方だと生臭さが際立つのではないかと心配する人も多くいますが、高知県で提供される鰹は冷凍を経ていない鮮度が抜群な生の状態が多いため、近所のスーパーで手に入るようなものとはわけが違います。これは遠洋まで行かずしても鰹が頻繁に漁獲される高知県ならではあり、生の鰹が手に入らなければ鰹のタタキは提供しないという徹底したこだわりをもつお店も数多くあるほどです。
高知県の鰹が旬を迎える季節は年に2回。
脂が少なめでサッパリとした味わいの「初鰹」を味わうなら3月〜4月に。十分に脂がのり、モチッした重厚感のある食感が特徴の「戻り鰹」を味わうなら9月〜10月に訪れるのがベストです。