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「チキン南蛮」?いいえ「チキンナンバン」です。

「チキン南蛮」?いいえ「チキンナンバン」です。

高知県民が抱く深いチキン南蛮“愛”

 

「チキン南蛮」と聞いて思い浮かべるのは、小麦粉をまぶしサクッと揚げられた鶏肉に、タルタルソースのかかった料理です。

比較的簡単な調理法なので家庭料理として親しまれるものはもちろん、定食屋の定番メニューや居酒屋でのお酒のつまみとしても提供されるため、誰もが一度は口にした経験があるのではないでしょうか。

もともとは、宮崎県のとある洋食店が発祥といわれていることから、一般的には宮崎県のご当地料理としてのイメージがある「チキン南蛮」。

しかし、発祥の地ではないはずなのに、もしかすると宮崎県以上に「チキン南蛮」に対して深い愛情を注いでいる県があります。

そう。高知県です。

中には「お弁当を選ぶ時はチキン南蛮が入っているかを確かめる」「週に一度は必ずチキン南蛮」「チキン南蛮の本場は高知だ」「チキン南蛮は高知が誇る名物料理」などとひと際激しいチキン南蛮愛を見せる地元民もチラホラ…

 

では、どうしてこれほどまでに「チキン南蛮」が高知県民に愛されるようになったのでしょうか。

 

チキン南蛮をソウルフードとして定着させた、とあるお弁当屋さん

 チキン南蛮をソウルフードとして定着させた、とあるお弁当屋さん

 

チキン南蛮は、今や県民のソウルフードとも呼ばれるほどに、高知県では深く親しまれている料理です。もしも身近に高知県出身の人がいるのであれば、試しに地元の名物料理を尋ねてみてください。おそらく「カツオのたたき」の次に多く返ってくる答えが「チキン南蛮」の確率が非常に高いはず。

しかし前述したように、チキン南蛮が高知県の発祥という説はどこを探しても見当たりません。

にもかかわらず、高知県民がこれほどまでにチキン南蛮を地元の誇りとして主張している背景には、とあるお弁当屋さんの存在があるからです。

それが「食いしんぼ 如月」。

高知県出身者であれば、おそらく知らない人はいないはずの馴染み深いお弁当屋さんです。

かつては県内のあちらこちらにお店がありましたが、現在は、高知市内と香南市あわせて16店舗。お弁当屋さんとしてだけでなく、ちょっとした食品や日用品、雑誌なども販売する、地元密着型のコンビエンスストアでもあります。

高知県内では知る人ぞ知るこちらのお弁当屋さんの看板メニューこそが「チキンナンバン」。「チキン南蛮」ではなく「チキンナンバン」です。

 

タルタルソースはかけない「チキンナンバン」

 

タルタルソースはかけない「チキンナンバン」

 

この、「チキンナンバン」の販売こそが、もともとは宮崎県のご当地料理だったはずの「チキン南蛮」を、高知県民のソウルフードへと発展させたきっかけだと言われています。

もちろん一般的な「チキン南蛮」と同じように、サクッとした薄めの衣をまとったジューシーな鶏肉料理に変わりないのですが、「チキン南蛮」と「チキンナンバン」の大きな違いは、上にかけられるソースにあります。

みなさんが思い浮かべる「チキン南蛮」のソースといえば、やはりタルタルソースではないでしょうか。しかし「チキンナンバン」には、定番ともいえるタルタルソースはかけません。代わってかけられるのが、薄いサーモンピンク色をした“オーロラソース風のオリジナルソース”です。

どうして“オーロラソース風のオリジナルソース”などという回りくどい呼び方をするのかと疑問に思われる人がほとんどですよね…

オーロラソースといえば、本来はベシャメルソースに裏ごししたトマトやトマトピューレとバターを加えたソース。もしくは、日本では単純にマヨネーズとケチャップを混ぜたソースのことを指します。しかし、「チキンナンバン」にかけられているソースは、ベースこそオーロラソースであることは間違いなさそうですが、レシピが門外不出のオリジナルであり、一般的に知られるオーロラソースなのかは定かではないので、ここでは“オーロラソース風のオリジナルソース”と名付けてみました。

チキン南蛮に薄いサーモンピンク色のオリジナルソース。

チキン南蛮のソースといえば、タルタルソースが当たり前だと思われている県外出身の人には少し抵抗を持たれがちですが、独特の酸味と強めの甘み、それに深いコクが絡み合うこのソースは、見た目とは裏腹にとにかくチキン南蛮との相性が抜群。

地元では子どもからお年寄りまで、老若男女問わず愛され続けているのはもちろん、県外に住んでいても、高知へ行ったら、まずは「くいしんぼ 如月のチキンナンバン」を買って食べるという熱狂的なファンもいるほどです。

 

高知県民にとって、普段の食生活には欠かせないソウルフードである「チキン南蛮」もとい「チキンナンバン」。

「くいしんぼ 如月」が最初にこのようなスタイルを確立したのかは、はっきりとしていませんが、普段の生活には欠かせない身近な存在のお弁当屋さんが、「チキンナンバン」を県民のソウルフードへと発展させたのは間違いないはず。

現在では、「くいしんぼ 如月」だけではなく、高知県自慢の “オーロラソース風のオリジナルソース”がかけられたスタイルの「チキンナンバン」があちこちの飲食店やお惣菜屋さんなどで提供されていますので、高知県へ訪れた際は、ぜひいちど味わってみてください。